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3/13 10:00 天気快晴。今日から慎也のちょっとした楽しみが始まる。
学校は昨日で終了。無事な進級判定と無事じゃない通信簿をもらい、高校一年の課程を修了した。
昨晩は、友達と遅くまでメッセで駄弁ったり、エロゲCG回収をしたせいで酷く眠い。それでもお腹が空いたので、グダグダと身体を持ち上げると、欲求を満たすためリビングに向かった。
今、家には慎也一人しかしない。両親は電車で10分程度のところで二人暮らし。兄が二人いて、長男は既に自立し、次男とこのマンションの一室に二人暮らしをしている。が、次男は昨日から勤務先の慰安旅行に行ってしまっている。つまり、家には慎也一人と言うわけである。
買い溜めしておいた、電子レンジで温めて食べれるご飯と少しのおかずを食卓に用意し、携帯を片手に箸を進める。
彼はテレビをほとんど見ない。理由は至極簡単。テレビより、むしろ携帯やパソコンの画面を眺めてた方がよっぽど楽しいからである。

食後のコーヒーを飲みながら、今日の予定を確認。
今日はXansetsuの家に遊びに行く約束がある。そういえば、あのゲームをそろそろ返さないと…。そんな事を耽りながら、飲み干したマグカップを片付け、部屋に戻った。
約束の時間まで、まだ余裕がある。もう一眠りしようと自分のベッドに潜りこんだ。

ふと、足に何か柔らかいものが当たってる。

布団を持ち上げてみると、何か茶色いふさふさした物が丸くなっていた。よく見れば、小さく上下していて生きているのがわかる。寒がって、体をきつく丸めてるし…

「・・・!?」
その『得体の知れない何かの正体』が閃いた時、呼吸が止まった。頭の中でずっと、まさか、そんなはずはない、と現実と妄想を否定しつつ、心は神が与えた奇跡に小躍りしていた。
「落ち着け、俺。こんな事あるわけねぇ。きっと疲れて頭がおかしくなったんだな、うん。」
念仏のようにぶつぶつと唱え、持ち上げた布団を元に戻した。そして、その現実から目を反らすように、静かに部屋を出て、家を出た。戸締まりをして、目指すは頼れる友人、Xansetsuの家へ。彼ならきっとこんな赤恥を忘れさせてくれるはずだ。
約束の時間よりかなり早かったが、Xansetsuの家に向かって自転車を漕ぎ始めた。


「橙が布団の中にいた?私だって毎晩チルノと一緒に寝て…」
「いや違うんだって!今回はマジなんだって!!」
Xansetsuは約束より二時間も早く着いたのに、すんなり家に上がらせてくれた。インターホンで貴重な睡眠を妨害されても、冗談一つで済ます。この辺りが、二人が仲のいい理由なのかもしれない。
そして今日も、彼の自室でいつもの馬鹿話が始まる。
「あのなぁ…まぁいいや。軽くその時の事説明してくれ。ぶっちゃけ、相当妄想で使い込んだ私の頭でも、意味解らんわ。」
冗談を交えて言ってるところを見ると、彼には全てが理解出来てるように思える。顔だってニヤけてるし…
色々考えても仕方ないので、洗いざらい今朝の事を話した。

「なるほどな。その茶色い物体の写真とかある?」
「焦ってたから、写メ撮んの忘れた;」
しばらく沈黙があり、Xansetsuが導きだした結論はこうだった。
「お前の勘違いか、精神的にマジで逝っちまったかだな。」
彼なら信じてくれると思っていた慎也はがっかりした。
「なんで信じてくれないんだよ~; お前なら信じてくれると思ってたんだぞ。」
「あぁ、わかったわかった。悪いけどBLはまた今度な。あのな、幻想郷は私たちには届かない場所にあるの。そう簡単に嫁が『口寄せ』出来たら、秋葉は今頃、動物園か何かになってるから。それにもしその話が本当だとしてもだ、それが橙本人…いや本猫(?)なのか証拠がない。」
彼の言うことは、間違ってるようで実は理に敵った説明だった。そんな力説を聞くと、それが本当の事だと思えるから不思議である。余談だが、冒頭がおかしいのは仕様である。なぜなら、彼はいわゆる『どっちでもおk』な人だから。
「その茶色いのが毛布とか抱き枕だった可能性は?もしかしたら野良猫とかどこかのペットとかが逃げ出して潜り込んだかもしれない…ってのは、流石に無理があるなw そうだな…あるいは、コーヒーの染みとかさ…」

―ピンポーン―

此処で彼の力説を遮るかのようにインターホンが鳴る。彼はマスターが来た、と立ち上がり、ドアを開けに階下に下りて行った。
「要するに、この話はもうおしまい。後で何か妄想ネタでも書いてやるからそれで勘弁してな。」
事後処理も流石だった。



現在、とっくに日は暮れ、21:00。結局、皆と遊んでいるうちに朝の事などすっかり忘れていた。結局、何かの間違いだったんだ、とXansetsuの力説とメールで送られて来た、橙との甘すぎる小説で事態は収集した。
そして、解散になり、ネットで会う約束を取り付けた。朝と同じ道を自転車で駆け抜け、鍵を開けて帰宅。ただいまぁ、と間の抜けた声が静かすぎる家に響いて、慎也は今日は一人であることを思い出した。
鞄を下ろし、早速パソコンを開こうと直で自室に向かい、電気を付けて、今までの上機嫌が一気に冷めていくのがわかった。
部屋が何者かによって荒らされているのである。
直ぐ様、リビングに駆け込んでみたが、予想通り、リビングもまた荒されていた。急いで通帳と印鑑を探す。
思いの他、それらは直ぐに見つかった。これは片付けが終わって気づいたのだが、金目の物どころか、なくなった物は何一つなかったのである。
ひとまず荒れたリビングを片付け、何事もなかった事に、ほっと胸を撫で降ろす。喉が渇いたので、水を飲もうと冷蔵庫を開けて、安堵したのも束の間、また気分が冷めていった。
中が空っぽなのである。金目の物は何一つ盗られなかったが、食料と水分、調味料まで盗まれていた。流石におかしいと感じた慎也は思い出した。いや、思い出してしまった。
「 ま さ か ! 」


今度は部屋を片っ端から探してみた。予想が正しければ、今回の事件の犯人はまだこの家に潜伏してるはずだ。そして犯人の目星もついてる。
自室のクローゼットを開け、兄貴の部屋を開け、トイレを開け、洗面所を開け…
最後に残っていたのが風呂場だった。恐る恐る浴室の開き戸に手をかけ、一気に引いた。中にいたのは……
マヨネーズやらケチャップまみれになった一匹の妖獣だった。
「なんだ。やっぱり俺の頭はおかしくなったんだな。あぁ、Xansetsuに何て言えばいいんだ…」
そのまま頭を抱えて座り込んでしまった。流石にここまで来ると、あれだけ廃人化したXansetsuやマスターだってもう、相手にしてくれないだろう。まさか、風呂場に調味料まみれの嫁がいました、なんて笑い話にすらならない。
お前、マジで大丈夫なのか?と彼等が心配する真顔がありありと浮かぶ。
「はぁ、俺はこれからどうやって生きていきゃいいんだろorz」
「あの、何かお困りですか?」
可愛く透き通った声が浴室にエコーを残して響いた。
慎也は顔上げてはっとした。嫁が不思議そうな顔で、つぶらな瞳を此方に向けているのである(調味料まみれオプション付き)。
その可愛さに吸い込まれそうになった彼は、そっと手を伸ばし…

嫁を洗ってやることにした。

「ほら、動かないで!大丈夫だから!!」
「いやです!お水はいやです!」
橙をただ洗うだけの作業がこんなに辛いとは思わなかった。いくら水を嫌がる式神だって風呂くらいは入るだろうに。幻想郷と此方の世界では風呂が違うのだろうか。それとも、藍や紫の力量が凄いのか…(後者の可能性大)。
なにはともあれ、どうにか橙を落ち着かせ、シャンプーを手で泡立て、目の前にちょこんと座っている、調味料でベトベトになった妖獣の頭をごしごしと擦るのであった。
「にぎゃっ!」
「おい、いきなりどうした;」
「泡が目に入った~。痛い~;;」
「そのまま、目閉じてろ。涙と一緒に流れるから。」

頭を洗い、シャンプーを―水量を限りなく緩めた―シャワーで流した。ついでに、身体も洗ってやり、流石に浴槽は橙が溺れる心配もあったので、湯船には沈まず、浴室を出た。
大きめのバスタオルで橙を拭いてやる。ドライヤーを使ってもよかったが、これも橙が激しく嫌がったため廃案。結局、バスタオルでごしごしとやるハメになった。

「はい、どうぞ。」
「わぁ、ありがとうです。」
ホットミルクを橙に差し出し、ほんの束の間の団欒。
橙は「箱の中に牛乳を入れたら温まった!すごいすごい!」と電子レンジで牛乳を温めただけなのに、はしゃいでいた。
「なぁ、お前…いや、君は何処から来たの?」
「何処から?そんなの紫様のお屋敷に決まってるじゃないですか。」
「あ、そう。それじゃ、此処が何処だか、自分が誰か分かる?」
「馬鹿にしないでください、人間。此処は人里で、私は橙ですよ。妖獣だからってからかってるんですねっ!」
慎也はまた頭を抱えた。妄想・幻聴に付き合っている自分も相当イッちゃってるが、こんな面倒な妄想をするのは初めてだった。妄想なら何でもおkなんだから、『設定はお互いに既に了解済み』から始めればいいものを…
「えっとね、橙。よく聞いてくれ。確かに、君の名前は橙で俺は人間だけど、此処は人里じゃなくて…なんて言うか…君達の言う『外の世界』ってやつ。」
「そんな悪ふざけして、わたしをからかってるんでしょ!いい加減にしないと…」
「嘘じゃねぇって;」
「じゃあ、此処が幻想郷じゃなくて外の世界だって証拠をください。」
もちろん、慎也は人里どころか幻想郷にすら行った事がない。つまり、あっちの民家になくて、こっちの民家にはある物なんて、分かるわけが…あった。
「じゃあ例えばこれ。電子レンジって言うんだけど、中に何か入れてスイッチを入れれば中の物が温まる機械。」
「たしかに幻想郷にはそんな物ないですけど…でもそれだけじゃあ、証拠としてはまだ足りないです!」
「じゃあ次、冷蔵庫。今度は中に物を入れれば冷やしてくれる機械。はい。」
そう行って中からお茶の缶を取り出した。橙の入浴が終わった後に、あとで飲もうと冷やしておいたのだ。
「ひゃぁ、冷たい~>< で、でも、さっきから温度を操る機械ばかりじゃないですか!そんなの魔法とか河童に頼めば…」
「んじゃ、この中に入っていた食べ物で、橙が食べたことも見たこともない物なかった?」
「それは…」
「いくら魔法や河童でも、食べ物とかを加工したりするのは無理なんじゃないかな?」
ここまで言われてしまうと、橙も納得せざるをえなかった。
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